喧嘩

「信じられない」
 四宮が机に肘をついて呻いた。
「ああ…もう、信じられないよ!」
「だからごめんてば」
 斜向かいの机から、テルが、もううんざり…という感じで声を張り上げた。
「何回も謝ってるだろ…」
「誠意が足りないよ」
 視線を合わせようとせずに四宮。
「…悪いと思ってるってば…」
 だんだんテルの声が元気を無くしていく。
 四宮は、とりつく島もない。

「大体、何で…今日に限って…あんな…」
 ぶつぶつと四宮が言う。
 テルの言い分は聞くつもりはないが、愚痴は言いたいようで。

「…い…いつも、お前が言ってくれるから…」
「…だから、普通、するクセつけるだろ?それで」
「えっ…だって、オレ…ホントはあれ…嫌いなんだよ…束縛されてるみたいでさ」
「ふざけんなよ!?」
 四宮は声を荒くすると、椅子から立ち上がった。
「キミの嗜好にいちいち合わせて、ボクの身の振り方を決めろって言うのか?」
「だ、だから、悪かったって…悪かったって思ってるよ、ホント…」
 テルはだんだん泣きそうな声になってきた。
「もう、キミとはごめんだよ」
「お前が、動くの早すぎたんだよ…!」
「早くいきたかったんだから仕方ないだろう?時間もなかったんだ」
「じゃあ、お前一人でいけばよかっただろ!」
「問題はそこじゃない」
「じゃあ、何か?お前、無理矢理人のこと……たくせに…」
「無理矢理じゃないだろっ、ちゃんといいかどうか聞いたじゃないか」
 テルも、その辺のことは覚えて自覚しているだけに、黙るしかない。

「…ホント、悪かったって思ってるってば…」
「いくときは一緒だって、言ってただろうがキミ」
「もう…悪かったってば…」
「今度やったら、ぜ・っ・こ・う・だ、分かったか?」
「そこまで言うか?」
「言うよ!」
 また、同じことされたら、かなわないからね…と四宮。
「…オレ、もう、お前と…すんのやめる!」
「どうぞ?お好きに」

「おい」

 さすがに、いつまでも途切れなさそうな喧嘩に、外科部長が聞いててうんざりしたらしく、口を挟んだ。

「…一体、さっきから、何が原因で喧嘩してるんだ?」
 四宮は北見の方を見ると、すごい勢いで部長席につめより、
「聞いてくださいよ北見先生!今朝、彼と早朝ドライブしてたら、テル先生ってばシートベルトし忘れてて、ボク、警察に追いかけられて、キップ切られちゃったんですよ!」

「…………」
 北見はしばらく間をおいたあと、
「テルが悪い」
 と言った。


四宮先生はハンドルを持つと性格変わりそうとか思ったんですが表現しきれなかったです。キップ切られたどころか、あんまり運転の経験がないので、リアリティに薄そう…
つうかこの場合、助手席のテル先生もキップ切られるんですね!知らんかった