「オレンジコロンの魔女」              刈谷真裕美

 

 リッカスは悩んでいた。

 

 以前は荒れに荒れ、家屋が20しかなかったこの土地も、昨年とんだハプニングで緑豊かな農耕地へと姿を変え、そのおかげでぽつらぽつらと増えた領民が、25家屋になっていた。
 冒頭の悩める青年は御年25歳、一応このこぢんまりとした土地の領主であった。

 

「むむう、何故だ。何故なのだ…」
「ご主人」
 両親の位牌を前に頭を抱えるリッカスの背後から、執事のビガーが声をかけた。エプロンに鍋つかみで土鍋を抱えた格好の彼は、やせぎす、21歳、昨年まではリッカスのたった一人の家族だった。そう、ご領主が奥方をめとるまでは。(勿論、新婚生活以降も館に住み着いている)
「早く、ご飯食べに来てくださいよ、ひえっちゃうじゃないですか、またあんたの奥さんの希望でチーズフォンデュなんですからね、あんまり遅いと、鍋にこびりついたカチカチのチーズを食べてもらうことになりますよ」

 ビガー、21歳。執事歴も21年。しかしその態度には主人を敬う態度はカケラもなかった。館にすんでいる人間は三人ぽっきりなのであるが新しい奥方は全く働こうとしないので、基本的に新妻がやるべき仕事は、裸エプロンを除いて全てこの男がやっていた。

 

「むむっ!?まさかそのせいか!?」
「はあ?」
「もしや、チーズの食べ過ぎでわが妻には子供が出来ないのか!?」
「バカじゃないの」
 間髪入れずにビガーが応える。
 さあはやくごはんごはん、と言いながらきびすを返したビガーのマントをひっつかみ、必死な形相でリッカスはすがった。
「何故だ!?知っているのか?ビガー!我々に子供が出来ない理由を、お前は知っているというのか!?」
「そんなの、あんたが、奥さんに指一本触れたこともなければ、夜に閨を共にしたこともないからに決まってんでしょーが!」
「ぬうっ、だが、ベーグルは暑がりだから手をつなぐのすら嫌がるのだ!」
「だから、そんなんで子供が出来るワケないでしょうが」

「何故だ!?私は母上に、夫婦が仲良くしてると、コウノトリが子供を授けてくれると教えていただいたぞ!であるからして、私はこんなにベーグルの機嫌を損ねないように日々気を遣っているというのに…それとも、あれは嘘だったのか!?」
「嘘です」
「がーん」
 さすがにショックを隠せない模様で、リッカスは口をまん丸にしながらフラフラ揺れた。そのままがっくり膝をつく。豪奢な金髪が、整った顔にぱらぱらとこぼれ落ちた。
「こ、子供さえ…ッ…子供さえ出来れば、我が領家も立ち直ると思っていたのに…」
「傾きかけている自覚あるんスね」
 辛辣な意見を述べながら、厨房に戻ろうとしたビガーのマントを、またしてもリッカスがはっしと掴んだ。
「なんですか!もう忙しいんだからいい加減じゃれてないでご飯食べに来てくださいよ!」
「ビガー!頼む!我らに子供を!子供を授けてくれえぇぇぇッッ」
「は?」
「知っているのだろう、子供の作り方を!是非、私にもその術を伝授してくれ!でなければ、我が領家は私の代で潰れてしまう!」
 耳年増のビガーはそんなもの五つの時から熟知していたが、(相手が居ないので勿論実践したことはなかった)さすがに懇切丁寧に主人に口で説明してあげることを恥ずかしいと思うくらいの臆面はあった。
「いやですよぉ」
「頼む!お前にかかっているのだ、我が血統が絶えるか続くかは。お前の両肩に!かかっているのだああ…」
「そんなの、御主人様の小綺麗な外見で、ちょっと都の王宮のパーティーでも行って女引っかければ相手がいくらでも教えてくれますよ」
「いやなんだ!パーティーはいやなんだ!あの脂粉の香りが大嫌いなんだ!よっぽど腹が減って農業が不作の時しか行きたくない!」
 わめくリッカス。実は彼はもてる。貴族の中では極貧であれど、一応血筋はよく顔も整っているので、上流界の若い娘達の間では、お婿さん候補の筆頭であった。ちょっとおつむが弱い、という噂も都では流れているようだが、すこしくらい頭が弱い方が、浮気にも気付かないだろうし旦那には都合がよい…ということらしい。

 農業が不作だと彼は王宮に俸禄の無心に行くのだが、(普段もらっていない分がたまっているので)そのたびにげんなりして帰ってくるのは、おしろいの匂いにあてられてのことらしい。

 

「はあ…もう、しゃーないですねえ」

 ビガーは肩をすくめた。
「では不肖このわたくしが、御主人様にハウトゥラブを伝授して差し上げることにしますか!」

 偉そうに胸をはる姿に感銘したらしく、ひざまずいたリッカスは潤んだ目で執事を見上げた。
「お前がこんなにも頼りになる男だということに、この21年間気付かずにおったぞ!」

「やだなあ、今頃気付くなんて遅すぎますよ御主人様、で、一応確認してきますが、御主人様は、奥方と手を握ったこともないのですね?」
「ない」
 そもそも奥方は、婚礼の儀式をすっぽかした。(本人は眠くなったと言い訳していた)したがって、誓いの口づけすら交わさないまま二人は夫婦になった。
「まず、第一ステップ…御主人様も、口づけくらいは知ってなさるでしょう」
「おお!勿論だ!おとぎ話はキスで終わるものだ」
「では、それを!奥方に!ぶちゅーっと!」
「なんと」
「一発かましてやってください、あの小生意気な顔にぶちゅーと!」

 リッカスはショックを受けた顔でよろよろと後ずさった。
「じょ…女性にそんな無礼なことをいたしていいのか?」
「結婚してるから良いんです。おとぎ話のお姫様もみんなキスされて喜んでるじゃありませんか」
「いや、内心嫌がってるものかと」
「んなわけないじゃないですか!さあ!さあ!子供を作るためですよ!」
 ビガーは土鍋を持ったまま、主人を部屋から追い立てた。

 

一方、噂の奥方は、自室のベッドの上でいぎたなく休んでいた。彼女にとって、ベッドでトロトロうつらうつらするのが、人生に置いてもっとも愛すべき時間帯なのである。

 イノシシが突進してくる夢を見てうなされかけた頃、コンコンと控えめなノックの音が聞こえて彼女は目を覚ました。
「はぁい?」
「わ、私だ、入るぞっ」
 うわずった声で部屋にソロソロと入ってきたのは、旦那様であるリッカスであった。
「なんなのぉ」
 まだ眠そうに目を擦りながらベーグルが聞くと、リッカスはベッドの彼女の傍らに腰を下ろした。
「ベーグル、私の話を聞いていただきたい」
「はぇ?」
「ベーグル、実は…私には跡継ぎを作らねばならないと言う使命があるのだ。領主として…」

「へぇ」
「意味は分かるな?わが妻よ!かくなる上はそろそろ私の愛を受け止めてもらいたい!」
 奥方は眠そうな目であくびとのびをした。
「そこですっ!そこで!そこでいざ口づけをば!」
 物陰からビガーが囁く。
 背後からの声に押されるように、リッカスは目の前の奥方の両肩に手を置いた。
「ん?」

 その時、ベーグルが眠そうだった目をぱっちりと見開いた。
(むっこれはいかん…!)
 リッカスは凍り付いた。
 彼の妻は、掛け値なしに美しい。流れる蜜の金髪に、夕日の紫を溶かし混んだような澄んだ双眸…バラの唇にビスクドールのようなシミひとつない肌。旦那であるはずのリッカスは未だにこの魔女である妻の美貌に慣れず、こんなに間近で見たのは久しぶりだったため、頭がくらくらしてきた。
 なんせこのような田舎にある彼の領地に残っているのは、もういい加減年寄りばかりで、若い女などほとんどリッカスの回りには居ないのだ。免疫が出来ていない。そこにもってこの美女を妻に娶ったとあると、あまりの環境の変化に手を出せずにいるというのも当然と言えば当然であった(おしろいが嫌いなリッカスにとって、たまに王宮に出向いたときに出逢う上流界の女性は、ブス以外の何者でもないので)。

 

「なんなのぉ〜?」
 自分の肩を抱いたまま固まっているリッカスにぶすくれて、ベーグルは頬を膨らませた。
「…いやっ、そ、そなたは本当に美しいな」
「そんなの当たり前ジャン!」
「う、うむっ、さ、さすがは私の妻だッ!」

 リッカスがはっはっはっと高笑いするのを見て、後ろで物陰に隠れたビガーが歯噛みした。
(御主人様…このへたれめっ)

 その時である。

 

「美しいですって!おふざけでないわ!」
 金属を連想させるような高音の女性の声が響いたかと思うと、部屋の中にぼんやりと固まった煙のようなものが現れて、次第に輪郭をはっきりとさせ、やがて人の姿になった。
「ぬうっ?誰だ、貴様はっ」
 腰の剣に手をやるリッカスを一瞥すると、現れた人影は「ふんっ」と鼻を鳴らした。
 黒く、くるくると丸まった髪を腰のあたりまで垂らし、まなじりの上がったキツイ双眸をした、スマートな体つきの女性であった。ぴったりと身体のラインにあった黒いロングスカートが床まで届き、絨毯の上に少し広がっている。彼女が姿を現した途端、ふわっと甘い香りが部屋に漂った。甘く、それでいて爽やかな、オレンジの香りだった。

「あれ…?あんたどっかで見たよぅ」

 とぼけた様なベーグルの口調に、突然出現したその女性はますますまなじりを吊り上げた。

「あたしよっパキラよ、パキラ!!」

「ああ…パキラ…ああ、パキラァ〜〜〜」

 合点がいったようで、ベーグルの間延びした声が少しトーンを高くした。「たかが一年と少し会わなかっただけで、級友の顔を忘れてしまうなんてッ!あなたのおつむに入っている脳みそは、一体何分の一グラムなの!?」

「級友とな?」
 リッカスが眉間にかすかにしわを寄せながら聞き返した。

「そうよっ、魔術学校の。このムカつく女が首席で、あたしが次席だったのよッ。こいつが結婚相手を探すとかいうふざけた理由で学校をやめるまでの間、一体何年煮え湯を飲まされ続けたと思うのっ?ああ、考えるだに腹が立つ!」

「それはそなたが勉強不足だからであろう。我が妻の責にするとはいささか自分勝手なのではないか?」

「どんなにこの女が抜きん出て化け物じみた力を持っていたと思うのー!?普通の人間だったらどうやったって太刀打ちできっこないわよ!」

「まあまあ」

 見かねたビガーが腰を低くして割り込んできた。まるで自分の主人が二人に増えたかのような黄色い景色に、傍観するのも疲れてきたのだろう。

 一方、リッカスは、ベーグルと初めて出会った日のことを考えていた。

 この荒地だった自分の領地を、一瞬にしてチーズまみれにしたり緑あふれる豊かな地に変えたりと、言われてみればその凄まじい魔力は尋常ではないかもしれない。学校で習ったものとは知らなかったが、確かにあの威力であれば通常の魔女や魔術師は太刀打ちできないだろう。

「で?妻の元級友とやらだと言うそなたは、一体何をしにここに来たのだ?」

 リッカスが訊くと、パキラはフンっとまた鼻を鳴らした。

「ベーグルが結婚したって言うから、相手の男を見に来たのよっ。しかし、なーに?あれだけ理想の男を捜すなんて大口叩いて出て行ったワリに、見つかったのはただのオジンじゃなーい」

「おっ、おっ…、オジン!」
 リッカスは一瞬愕然とし、それからわなわなと震え出した。

「オジンとは何だオジンとは!小娘の分際で生意気なっ。ベーグル!この女に私のよさを語ってやれっ」

 自分を選んだ当の本人である奥方のほうを、リッカスは期待を込めて振り返ったのだが、彼女は級友の突然の来訪などもう既にどーでもよくなったらしく、シーツの上に倒れてすやすやと寝息を立てていた。
「ベッ、ベーグル〜〜〜!」
 リッカスはベソベソしながらベーグルのもとへと寄っていくと、彼女の傍らに膝を突いた。
「なんでそなたはそうなのだッ」
「…はぇ?」
 一度手放した意識をなんとかもう一度取り戻したらしく、ベーグルはゆっくり目を開けた。自分の主人がかがみ込んでべそくれているのを、不思議そうに見つめる。
「どうしたのぉ?」
「どうもこうもあるものかっ、私は今まで、一体そなたと居るときに私がこんなにむなしい気分になるのは一体何故なのだろうと思っていたが…理由が今分かったッそなたが冷たすぎるからだ!」
「ほぁ?」
 何を言ってるのかしら?という顔でベーグルは首を傾げた。
「今もっ…今も、自分の伴侶がオジン呼ばわりされているというのに耳も貸さず…」
「オジン〜〜??」
「む?」
 ベーグルはけらけら笑って、リッカスの鼻の頭を人差し指で押した。
「オジンじゃなくなればいいんじゃん!」
「な…?」
 瞬間、背筋を何かが這い上がり…身体中の神経の情報伝達が逆流する。全身の体毛が逆立つような違和感に、リッカスは硬直した。
「うわああああっ!?」
 がくん、と自分を取り巻く世界が…というより、自分自身がサイズを変えたのを察してリッカスは悲鳴を上げた。慌てて自分の身体に手を這わす。
 腕が細い。足も細い。胸が薄い。あれだけ鍛えた筋肉がどこへ行った!?
「何事だ!?ビ、ビガー、鏡をよこせっ」
 伸ばす手が。なんでこんなに小さく細いのだ?声も高い。
 ビガーが複雑な表情で、近くにあったベーグルの鏡台から手鏡をとってリッカスに渡した。
「なっ何ごとだあああああ!」
 悲鳴のようなリッカスの声が部屋に響き渡った。
 鏡の中の自分の姿は、まるで十代の少年のようだった。肩を越える長さだった金髪も、首筋を這う程度に短くなっている。
10歳ほど若くしてみましたぁ!」
 どうでしょうか!というような口調でベーグルが胸をはりつつ…悪びれた様子は一向にない。

「す、すぐもとに戻せぇぇぇっ…あ、いや!」
 詰めよりかけ、リッカスはあわてて途中で身を引いた。
「や、やはりいいっ。このままで構わない…!」
 ドキドキドキ。以前、荒れ果てた場所だったこの領地を、チーズまみれの世界から元に戻そうとして、うっかり緑豊かな土地に変えた彼女の超巨大な魔力を思い出したのだ。「元に戻す」つもりでうっかり今度は100歳の老人にでも変えられたらかなわない。
「ほーっほほほ!」
 急に、金属管をぶっ叩いたような高笑いが響く。
「それ見たことですか!その女はそういう女なのよ!そんな女を妻に娶って、ああ可哀想!おお可哀想!」
 先ほどの、パキラとかいう魔女が我が意を得たりと言った体で身体を揺らしている。ムカッときたリッカスは、ベーグルに今一度詰め寄った。
「つ、妻よッ…そなたの魔力を使わずと、私を元に戻す方法はないのか!?
10年たったら勝手に元に戻るよぅ」
「………聞いた私がバカだったっ(泣)」
 リッカスはダンッダンッ!と床を拳で叩いた。
「まあ、ものは考えようですよ御主人様」
 ビガーが慰めるような口調で、若返った主人の肩に手を置いた。
「このほうが奥方とも、ちょっと向こうが年上ですが釣り合いますしい、子供が出来ないために養子をとる手間も省けましたしい、なんつっても寿命が延びたのはめでたいですしい」
「…お前の慰めなどいらんわっ」
 リッカスはえらい落ち込んで、やさぐれた口調で怒鳴った。
 今や…なんと!?ビガーよりも年下になってしまったのだ。しかも6つも!今までとは立場が逆ではないか。なんたることだ。
 15と言えば両親が死んだ年。あのころの自分はそのストレスで何も食べることが出来ずがりがりに痩せて、まだ幼いビガーに随分心配されていた。その後、気を持ち直し、体力を蓄え心身を鍛え、今の体躯を10年かけて作ってきたのだ。その10年分がただの一瞬でパアッ!
「御主人様の大好きなキリンちゃんのぬいぐるみも今のお姿の方がまだ似合いますしい」
「だあああから、お前はだまってろおおおおっ!!」
 自分の雄叫びも、もはやみずみずしい少年の叫び声でしかない。ああ…ッなんということ…!
「ふっふっふ…」
 突然、黒髪の魔女が含み笑いを漏らした。
「あのむかつくベーグルがどれだけ幸せな暮らしをしているかと思って見に来てあげたけど、そんな配はなかったわ!自分の旦那を子供に変えるようじゃねえ、おっほほほほほほほほ!!」
 よほど今の目の前のやりとりが面白おかしかったらしい。魔女は細い身体を前後に揺らして、金属音の高笑いを続けると、「用は済んだわ!では御機嫌よう!」と捨てぜりふを残し、強烈なオレンジの匂いをまき散らしつつ、その場から姿を消した。
「な…」
 取り残された三人は唖然とする。
「なんなんだっ。なんなのだ一体あの女は!」
 そもそも、あの女が出てこなければ、こんなとんでもない事態にもならなかったというのに〜〜〜!!リッカスは立ち上がって、地団駄を踏んだ。
「どうでもいい好奇心で人の夫婦生活をめちゃくちゃにしおって…ッ!」
「ねぇ〜〜〜〜〜」
 悔しがるリッカスを見ながら、ベーグルがゆっくり立ち上がった。
 一瞬、リッカスはベーグルが自分より高い目線を持っていたらどうしようと考えたが、ありがたいことにそれはなかった。ほぼ同じくらいの身長ではあったけど。
 今や、リッカスが15歳なら、ベーグルはもともと17歳、認めたくはないが、ビガーの言うとおり、今の方が年齢的には自分と彼女は釣り合っているようだ。年上の女房は金の草鞋を履いてでも探せと言うし。

「あんた、でも今の方が可愛くて好みだなぁ〜」
 にっこりと至宝の笑みを浮かべて、ベーグル。
「勝手なことを抜かすなっ、貴様が…こんな…その…本当か?」

だんだんと語尾が勢いを無くすリッカス。同時に次第に顔が赤みを増す。
「うん〜〜〜」
「まっ、前から思っていたのだがなっ、その語尾を伸ばすクセは大変だらしなく、私は好かない!私の妻であるのなら、その口調を改めていただきたいっ」
「いいよ」
 あっさりと話し方を正すベーグル。それだけで妻がずいぶんと賢い人間のように思えてきて、リッカスは胸のドキドキが最高潮に達するのを感じた。
「そ…その、ベーグル、先ほども言ったが」
「うん?」
「そなたは本当に美しいな」
 今度は、彼女も当たり前ジャン!とは言わなかった。
 あとは、執事に教えてもらったハゥトゥラヴを実践するだけッ!
 初めてのキスは、おとぎ話で読んで想像したのよりもずっと嫌じゃなかった。

 

 その後、自分をほったらかしてラブラブの主人夫婦に嫌気がさしたらしく、ビガーはベーグルに連絡先を聞き出して、パキラと文通を始めたとかなんとか。
 この年が豊かな国へと発展を遂げてゆくのは、まだまだ先のことである。

 

 

 

あとがき
はじめ構想を会長に話した時と、全然違う話になっちゃってごめんなさい…。

もっと、パキラが目立つ話にしようと思っていたのですが…おや?(いや充分目立ってるっちゃ目立ってるけど)

パキラが準主役の話にするつもりだったので「オレンジコロンの魔女」としたのですが、話を描いてみると「リッカスのファーストキッス大作戦」の方がしっくりくるなあ…と思いました。
それでは皆様お疲れさまです。